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暗闇から意識が引き上げられたとき、そこはガタガタと木の床が揺れる場所だった
体は横になっていて、動かそうにも両腕は後ろに回されて布かなんかでぐるぐるに巻かれているような感覚がして、両足もロープで縛られている
元々ついてた首輪の上に更に何らかの拘束具がされてるし、金属の物体をくわえさせられているから声も出せねぇ
残されたのは目と耳だけ
目線だけで辺りを見渡せば、同じような奴らが何人かいて、パッと見た感じの年齢は皆若そうだった
押しくら饅頭と言うほどでもない箱の中で、
すぐ正面にエニスはいた
この小狭い箱は恐らく馬車の荷台とかなのだろう
お上品に体育座りをしているエニスは俺らに比べれば若干優しげな拘束で、首回りには何の拘束もない
この対応の違いは何だと考えて、身分の違いかぁ、とすぐに納得した
最初っから商品の俺と、そんな商品を買う立場であった人間だ。
そりゃ、こんなことする奴らでも丁重に扱うか
まぁ予想するに人攫いとか人身売買を生業としてる奴らが主人を殺して、たまたま外にいた俺とエニスを売ろうと考えたんだろう
主人が何で殺されたかなんて知らねぇけど、ブラックなところに半端に片足ツッコんだかなんかしたんだろ。
今頃臓器として商品になってんのか、山かなんかに埋められてんのか……、考えなくても良いことか。
あーあ、エニスに構って運命に流れの全てを任せた結果がこれか。
だったらさっさと逃げた方がよかったなぁ…、痛いのも苦しいのも怖いんだよ…
考えなきゃやってらんねぇ
思考停止になっちまったらそれこそ心がどうにかなっちまいそうだ
ガタンと一段と強い衝撃が来た後に、同席してる人攫いの一人であろう奴が話し始めた
「運がいいなぁお前らは。目的地に着いたらすぐに金持ちによる競りが始まるぞ?新たなご主人が来るのに長いことおすわりと待てをしなくていいんだ」
しゃがれたダミ声のそれは聞いていてとても不快だった
これだったらエニスの掠れてるあの声の方がよっぽどマシだ
「飼ってくれるご主人の元に行ったらちゃんと媚びへつらって、地面によだれたらしてでも物乞いでも何でもして餌を与えてもらえ?いい子なワンちゃんでいるんだぞ〜、売り戻されたら困るからなぁ」
ゲラゲラと笑うその喉元を踏み潰してやりたい
動けないからそれができないだけ、と言い訳をして
実際そうした後のことを想像して体の芯が冷えるように思う俺は、臆病者だと罵られるだろうか
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作者名:ねっこんこん x他1人 | 作者ホームページ:http://nekokobuta
作成日時:2024年3月20日 2時