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ゆったりと馬車が止まり、降りた先で見たのは
想像したのよりもこじんまりとした屋敷。

エニスの屋敷が無駄にデカかっただけなのか

それとも建物以外の敷地面積が広すぎるのに加えて距離が離れている事による錯覚か

恐らく後者だな、金髪のフューラー…様、の後に大人しくついて歩き進んでいくと「あれ、デカい?」って思い始めてきてるから

「アル、みて。とってもおおきいわ」

エニスがこう言うんだ、やっぱりデカいんだろう。

前の屋敷の全体なんてほとんど見たことがないし、何となく想像してたのが中世ヨーロッパの王族が住んでた城だったのも、ちょっとだけこじんまりした印象を受けたんだろうな

改めて見直してみたら、デカすぎて衝撃を受けた

「アル、なんで何もいわないのよ」
「……エニス、主人達の前では私語を慎んだ方が」
「なんで”じょう”ってつけないのよ」
「……エニス嬢、お静かに」
「あと、しゃべり方がなんかおかしいわよ?」

黙れっ、この馬鹿!!
ひとらんらん様は馬車と馬を戻しに行ったけど、
前にフューラー様、後ろに鬱様とショッピ様がいるんだ

この人達の怒りの沸点なんか全然知らねぇから、お願いだから余計なことしないで、言わないで!

この後俺達はどうなるってんだよ
殴られる?蹴られる?飯になんか絶対ありつけないだろうし、何の労働をさせられる?

そういえば、前の主人の所に初めて来たばっかりの頃の事はあんまり覚えてねぇけど

躾だ、って言われて体中を鞭で叩かれ続けたことは異様なほど鮮明に脳も体も覚えてて

ミミズ腫れが痕になってて、今も足とかにあるから多分背中にもあると思う

そういえば初めてちゃんとした食事をくれた、と思ったら死なない程度の苦しい毒が入ってたなぁ…

やばい、このままだと芋ずる式に色々と嫌なことが全部脳内を駆け巡りそう。
寧ろ現在進行形で駆け巡ってる

いやでも、この後されることに対する自分自身への牽制というか、耐性を付け直すって意味ではありなんじゃ…?

でも、待って、ちょっと…もぅ

「アル」

名前を呼ばれてハッとした

あぁ、ちゃんと前見ないと
ぶつかったりでもしてしまったら大変だ。

喉まで来てるように感じる何かを、気持ち悪い唾液と一緒になんとか飲み込んで

エニスの方を見た

「なん、ですか?」
「つかれたから、おんぶして」

立場をわきまえてくれよ元お嬢様

あと、足の拘束は売人が移動するときに切ってくれたけど腕は拘束されたままだからおんぶなんかできねぇよ

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作者名:ねっこんこん x他1人 | 作者ホームページ:http://nekokobuta  
作成日時:2024年3月20日 2時

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