答えを求めて ページ40
「……」
ずらりと本が並ぶ棚の前で私は眉間に皺を寄せている。そんな私の視線の先には、手を伸ばして届くかどうか分からない微妙な位置にある一冊の本。あれを取るか否か、私は今非常に悩んでいた。
此処は学園の図書室。最近私は此処である調べものをしていた。それはこの世界のことについてだ。本当に此処は私の知らない世界なのかどうか。身辺がようやく落ち着いてきたので、改めて調べてみようと思い立ったのだ。
けれど結局、胸に抱いた一縷の望みが叶うことはなく。私の予想した結果が覆えされることはなかったのだ。
やっぱり此処は、私が知っている世界じゃない。
どんなに歴史書を読み漁っても、自分の故郷である日本と言う名の国は何処にも見当たらなかった。それだけでなく、日本よりも大きくて有名な諸大国の名前すらもなかった。ページを捲れど出てくるのは知らない国名と文明、そして世界を揺るがしたとされる聞いたこともない戦争や大事件の名ばかり。
私は一体何処にいるんだろう。考えられることと言えば。
何が切っ掛けでどんな原理を使ったかなんて想像も出来ないけれど、別の
何にせよ、私が今体験していることは人類的に前代未聞なことなんだと思う。もう分からなさすぎて考えるのを諦めるくらい。ただ目の前の光景を受け止めるだけで精一杯。
私なりにようやく此処の暮らしには慣れてきたと思っている。あの日から過ごしてきた時間と、私の変化に戸惑いながらも受け入れてくれた周りの人達のおかげ。あ、その人達って言うのは家族とか屋敷の使用人達のことね。学園の人達は入ってないから。
皆のおかげで私は元いた世界よりずっと良い暮らしを送れている。気楽で、充実していて。これで過去の記憶が消えてくれれば最高なんだけどな。
その記憶の所為で時々、此処は私の世界ではない、この世界にとって私は異物であると感じることがある。結局お前は一人なのだと。どうしようもない孤独感。私を愛して育ててくれる両親や血を分けた兄弟ですら。誰も本当のお前を知らないのだと、現実を突き付けられる。
そう考えると胸にぽっかりと穴が空いたような虚無感に苛まれる。けれどそれを埋める術を、私は知らない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 154人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
抹茶ちよこ(プロフ) - かぼさん、お久し振りでございます。いつもいの一番にコメントして下さりありがとうございます✨よくある題材で設定が設定なので今までの作品に比べ糖度は低いですが、私らしく物語を紡いでいきたいと思っております。最後までお付き合い下されば幸いでございます。 (1月18日 8時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 新作おめでとうございます✨初めてお見かけする雰囲気のお話に、今から続きが待ち遠しさと楽しみでいっぱいです(*´ ‐ `*)気温の変動が激しい時期ですので体調崩されないようお気をつけてお過ごしくださいませ。 (1月16日 22時) (レス) @page8 id: 36a6e4e509 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年1月16日 20時
