おまけ：画伯とイッヌで100人目 ページ28
夜中大雪が降った。ドカ雪だ。
早起きしたゾムが玄関を出ると、ドアのすぐ横にモサッとした金色の冬毛の大型犬……もといテリアがいた。
「ゾムくんおはよ〜」
「おはよ。俺のこと待ってたん？」
「うん。じゃないとゾムくんまたしょんぼりしちゃうでしょ」
以前にもこのような雪があった。
一面の銀世界。非日常。
まっさらな新雪に一番に踏み出す、あのサクサクした感触を楽しみに早起きしていそいそと玄関を出たゾムが見たのは、すでに雪まみれのテリアと足跡だらけの白と茶色混じりの地面。
「マジかよお前早すぎるやろ！」と少しの期待外れ感とそれを上回る雪まみれのテリアに対する草で笑ったら、「あっちはまだ走ってないよ！」と腕を取られて裏庭の方まで連れていかれて一緒に走って、その後もまだ誰も触れてない積もりたての雪を探して回った。
しょんぼりしたつもりは一秒もなかったが、テリアはあの日ゾムが新雪を楽しみにしていたことを覚えていたらしい。
だからゾムを待っていたと。
律儀なことに。お行儀良くお座りして。どうせ寝てもいないだろうに。
「早く行こ、ゾムくん！」
と、にこにこ笑うテリアにわざわざ「ちゃうねん」と言い訳するのも馬鹿らしく、ゾムはいつものようにテリアの腕をリードのように掴んで一緒に走ることにした。
---
テリアは散歩中よく迷子になる。
迷子というか、気が付いたときには訳の分からない場所にいる。脈絡もなく。チーノなんか宇宙に連れて行かれてた。本人は悪気ゼロなのがまた質が悪い。
ゾムもよく巻き込まれている。
「なー早く帰ろうや」
湖の真ん中にそびえる岩をじっっっと眺めて微動だにしないテリアにゾムが呼び掛けると、テリアはぐるりと振り返りゾムがテリアの首に突きつけていた刃物を取り上げた。
「何すんねん。そろそろ帰らんとトントンに叱られるで」
「そうだね。でもね、うちに帰るのにおれに凶器を向ける必要はないんだよゾムくん」
またテリアが訳の分からないことを言っている。
ここから帰る方法は✕✕。
だからゾムはテリアを✕さないといけないし、テリアもゾムを✕さないといけないのに。
そうしなければいけないのに。
「おれの友達に変なことしないで」
凍てつく視線を再び湖の方へ向けたテリアがゾムのナイフを投げ込むと、ちゃぽんと広がる波紋の輪が炎になって湖を焼いた。
炎は見る間に湖を覆い尽くし、岸辺に立つ二人も例外ではなかった。
気が付いたときには城に戻っていた。
こんなことが日常茶飯事。
そんな世界線。
※色々ありがとうございます！→←おまけ：この散歩は三日三晩に及んだ
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生姜(プロフ) - miiさん» コメントありがとうございます！夏なのでちょっとだけホラーっぽくしてみました！もしご不安の場合は新しいキャラシをご用意ください！ (8月18日 18時) (
レス) id: bbbb59189f (このIDを非表示/違反報告)
mii(プロフ) - 初コメ失礼します。utくんだけでなく自分もSAN値チェックをすることになりそうです。あんな終わり方されたら(人生が)終わるしかないんですけど、KP(作者様)の采配でどうにかなりませんかね？非国民じゃないので…どうか慈悲を…！これからも楽しみに待ってます！ (8月18日 18時) (レス) @page17 id: 2d3cfb07c5 (このIDを非表示/違反報告)
生姜(プロフ) - 檸檬さん» コメントありがとうございます！男主は大型犬だと思われてます！ (8月13日 20時) (レス) id: bbbb59189f (このIDを非表示/違反報告)
檸檬 - もう犬扱いされちゃってるぅ......！でもそんなところも可愛い...！！ (8月13日 13時) (レス) @page9 id: b3274f6834 (このIDを非表示/違反報告)
生姜(プロフ) - たらこんぶさん» コメントありがとうございます！いわゆる雑愛され的なサムシングですね！犬扱いで可愛がられてるけど本人的に不満は一切ないみたいです！ (8月11日 12時) (レス) id: bbbb59189f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：生姜 | 作成日時：2023年8月9日 21時
