鬱くんミュータントに会う ページ12
いったい誰が暴走脱走爆走狂犬を引き取りに行くかで一悶着あり、選ばれたのは鬱だった。
彼は物凄く嫌だったので大人げなく駄々をこねたが、男気じゃんけんは絶対である。
「ご家族に失礼のないようにな」「特に妹さんは丁重に扱うように」
散々言い含められて、手土産の焼き菓子詰め合わせを提げた鬱はテリアの実家の前まで車で配達された。
(……行きたくねぇなあ)
もう到着しているが、心底思う。
一人で考え込んだあげく城を飛び出すまでした狂犬に対して説得ロールを成功させる自信がないのがひとつ、あとはこの家の住民のひとりである女性に対して拭いきれない違和感を覚えていることがひとつ。
なんというか、彼女……テリアの妹さんはまるで人間に思えない。
兄のテリアはおおむね大型犬のようだが、妹さんはもっと得体の知れないミュータントのように思えてならない。
見目麗しい女性であるが、それすら違和感を助長させる一因にしかならない。
この世のものではないようなという形容詞は彼女のために生まれたとすら鬱は錯覚した。
だから鬱はこの家にだけは来たくなかった。
(妹さん留守だったりせんかな……気まずい……)
玄関扉の前で悩み硬直している鬱は、背後から近付く一人の姿に気が付かなかった。
「あら鬱さん。お久しぶりです」
「アッすいません、お久しぶりですぅ。うちの阿呆犬引き取りに来ました〜」
会いたくなかった人に背後から急に声を掛けられて鬱は死んだ。
しかし彼のよく回る口は当たり障りない台詞を紡ぎだしていて、スムーズに家中へ案内される。
目当てのテリアはリビングに敷かれた毛長のラグに寝そべって昼寝をしていた。
狂犬と呼ばれるだけあって飼い犬らしさのあまり身に付かないテリアがこうも無防備にくつろぐ姿は城内では稀であった。なんやねんという気持ちを、まあ実家だしなと自分を納得させる。
ソファをすすめられて座る。少し手を伸ばせば寝そべるテリアの頭に届く。流石に妹さんの前で撫でることないかと思ったので、鬱はお行儀良く座っていた。
妹さんは家畜の世話をしてきたところのようで、卵が満載の籠をキッチンに置いて、鬱のためにコーヒーを淹れてくれた。
……籠に積み上がる卵が、真っ黒く煤けたような漆黒の地に赤い斑点の散った、自然ではあり得ないカラーリングであるのには全力で目を逸らした。
とにかく早くテリアを回収して帰りたい。
そんな気持ちが鬱の胸中でみなぎった。
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車で片道12時間で行ける異世界→←妹さんは『真実』を知っている
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生姜(プロフ) - miiさん» コメントありがとうございます！夏なのでちょっとだけホラーっぽくしてみました！もしご不安の場合は新しいキャラシをご用意ください！ (8月18日 18時) (
レス) id: bbbb59189f (このIDを非表示/違反報告)
mii(プロフ) - 初コメ失礼します。utくんだけでなく自分もSAN値チェックをすることになりそうです。あんな終わり方されたら(人生が)終わるしかないんですけど、KP(作者様)の采配でどうにかなりませんかね？非国民じゃないので…どうか慈悲を…！これからも楽しみに待ってます！ (8月18日 18時) (レス) @page17 id: 2d3cfb07c5 (このIDを非表示/違反報告)
生姜(プロフ) - 檸檬さん» コメントありがとうございます！男主は大型犬だと思われてます！ (8月13日 20時) (レス) id: bbbb59189f (このIDを非表示/違反報告)
檸檬 - もう犬扱いされちゃってるぅ......！でもそんなところも可愛い...！！ (8月13日 13時) (レス) @page9 id: b3274f6834 (このIDを非表示/違反報告)
生姜(プロフ) - たらこんぶさん» コメントありがとうございます！いわゆる雑愛され的なサムシングですね！犬扱いで可愛がられてるけど本人的に不満は一切ないみたいです！ (8月11日 12時) (レス) id: bbbb59189f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：生姜 | 作成日時：2023年8月9日 21時
